「恋せぬふたり」無性愛者の感想

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恋せぬふたり 第5話をアロマンティック・アセクシュアルが見る

NHKドラマ「恋せぬふたり」の感想を、無性愛者(アロマンティック・アセクシュアル)の人間が書いていきます。

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「恋せぬふたり」 第5話 感想

オリンピックのため前回から三週間空いて、第5話が放送されました。

「恋せぬふたり」は全8回のドラマなので、ここから後半スタートです。

かず君は咲子に「恋愛抜きの家族になるのは自分でもいいじゃないか」と提案します。

一緒に暮らし色々話をしたことで割とかず君に好感を持ち始めていた高橋は、考えてみてもいいんじゃないかと伝えます。

いやいや高橋さんまで何言ってんだ無理でしょと思いましたが、ここで高橋さんが反対するのは恋愛みを感じてしまうかもしれません。かず君も視聴者も。

恋愛感情を持っている男性と同居は現実的に無理だと言いたかったとしても、独占欲から反対していると思われてはいけないし、かず君がまた恋愛感情だと誤解してスタートに戻るのはキツイしな、とかごちゃごちゃ考えながら見ていたら、かず君のどストレートな一言。

「家族(仮)って結構ドライなんですね」と、不快感すら滲ませて高橋に言い放ちます。

完璧な一言。高橋さんが反対したら絶対また最初みたいに好きなんじゃないかとか騒ぎ立てるわーと思っていてごめん。もう今のかず君はそんなこと言わない。恋愛ではない家族(仮)をちゃんと理解している。

いいセリフだった

高橋さんにもその言葉は刺さり、改めて自分の気持ちを考えている様子が映されます。

そもそも恋人じゃなくても、家族(仮)としてだんだん馴染んできた人と別れるのは寂しいと思って当然です。

でも恋人じゃないから強く引き留める立場にないのは確か。

咲子の幸せも考えるだろうし

咲子が音信不通になった友人に会いに行くかのくだりでも、高橋さんはたぶん自分だったら会いに行かないんですよね。だから咲子にもその考えを伝える。

でもかず君は会いに行った方がいいと言う。もし咲子が傷付いたら自分がなぐさめると言う。

ここでもおそらく高橋さんは家族の役割というか存在意義みたいなものを考え直します。

生活だけではなく心理的にも支え合うのが家族ではないかと思い、とりあえず友人が勤める美容室付近まで三人で一緒に行ってみることを提案します。夜にこっそり。

可愛かった

介助をしてくれたかず君へのお礼もかねた旅行がてら、三人は咲子の友人である千鶴がいる小田原へ行きます。

かず君はそれはそれは楽しそうですね。高橋さんもつられて楽しそうですけど。

ここまで明るい人ってそういない

そして千鶴と再会した咲子は、初めて友達の心のうちを聞かされます。咲子に恋をしていたから一緒に暮らせなかったと。

確かに第1話のベランダで後ろから抱きしめられて咲子が笑顔を浮かべているシーンはちょっと引っかかってました。女性同士とはいえ、やけに距離が近い描写をするなぁと。

でもその後の元カレとよりを戻した発言で、それほど仲のいい友達でも恋愛が絡めば二の次になって傷付けてしまうというようなことが言いたいのかなと思ってました。

千鶴のことが大好きだから友達でいたいと言う咲子と、好きって言わないでと泣きながらうずくまる千鶴。

ドラマや映画で、こういう誰かが取り繕えないほど傷付いているようなシーンを見るたびに、恋愛ってすごいなと心から思います。

恋愛感情がない私自身としては共感することはないんですが、それでもすごく胸が打たれます。

それと同時に、そんなにか…恋ってやつは…恐ろしい――とも思います。

みんなよくやる

そして友人との再会の後、咲子は家族になろうと提案してくれたかず君に返事をします。

恋愛が分からない自分だけれど、かず君にとって性も含めたそれがとても大事だということは分かると伝えます。

ついさっきも目の当たりにしたばかりですから。

千鶴…

アロマンティック・アセクシュアルでも、この世に生きていれば、多くの人にとって恋愛や性が重要なものだということくらいは知っています。

自分には分からないから、他者にとっての価値も分からないというわけでないのです。

咲子はきちんとかず君に自分の言葉で伝え、家族になることなく解散しました。

高橋さんの待つ家に帰ってから、ふたりで一緒に夕飯を食べるシーンも良かったです。

咲子にカニの身を取ってあげる高橋さんと、高橋さんの前で涙を流しながら食べる咲子。

商店街のポイント特典のシーンは家族として補い合う様子が描かれてましたが、このシーンはふたりが心理的にも寄り添い合う家族になったのだと伝わってきました。

カニ取ってあげるのは家族

今回咲子の友人が、同性に恋愛感情を抱いている人として描かれました。

実生活で結婚せず恋人もいらないと言い続けていると、驚くことに「もしかして同性愛者なの?」という展開になる場合があります。実際にありました。

そこまでして恋愛か!と思いましたが、恋愛しない人より同性愛の方がよっぽど理解できたんでしょうね。

それを考えると、このドラマを見ても「咲子は自覚がないだけで異性愛者ではなく同性愛者なんじゃないか」と思う人がもしかしたらいたかもしれません。

そういう人に、異性にも同性にも恋愛感情を抱かない性質だということをきっぱり明言する意図もあったりするのかなと、個人的に思いました。

全然そんなことないかもしれないけど…

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