「恋せぬふたり」無性愛者の感想

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恋せぬふたり 第7話をアロマンティック・アセクシュアルが見る

NHKドラマ「恋せぬふたり」の感想を、無性愛者(アロマンティック・アセクシュアル)の人間が書いていきます。

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「恋せぬふたり」 第7話 感想

パラリンピックのため前回から一週間空き、第7話が放送されました。「恋せぬふたり」は全8回のドラマなので、いよいよ物語も終盤です。

妹のみのりの子をきっかけに、子供を欲しがっているのか高橋に聞こうとするけれど、なかなか切り出せない咲子。

ただ咲子の気持ちもはっきりと分からないんですが、高橋さんが子供を欲しいと言ったらどうするつもりなんでしょう。家族(仮)を続行したまま子供を迎えるのか。それとも家族(仮)解散を考えるのか。

咲子は妹の幼い娘も生まれた赤ちゃんも可愛く思っている様子でしたが、それと自分が子供を持つことは全然別の話ですし。

全く別

咲子自身の気持ちはどうなんだろうと気になりました。そちらは今回明示されませんでしたが、高橋さんの方は今週で明らかになりました。

同僚の結婚による移動の影響で店長代理を任されることになった高橋は、大好きな野菜に関わる仕事から離れてしまいます。

祖母の家を守るため近くで働きたいから今の職場で頑張ると咲子に伝えますが、高橋さんの野菜への思い入れを知っている咲子は本当にそれでいいんだろうかと考えてしまいます。

でも実際問題、望む仕事から外されるのと同じくらい、そこそこの年齢での転職活動は心理的にきついものがあります。

ましてや転職先で野菜に関われなかったら意味ないですからね。

仕事って大変…

そんな中、咲子は会社の企画のため高橋から野菜関連の雑誌を借り、そこに載っていた女性の社長にコンタクトを取って経営している農場まで会いに行きます。

社長の遥は昔した大失恋をきっかけに今の仕事を始めたのだと言い、咲子はじきにその相手が高橋だと知ることになります。

遥も咲子が高橋と同居していること、さらには高橋の祖母が亡くなったこと知り、高橋との「大失恋」の過去を思い出します。

前回の予告の通り、高橋さんの過去を掘り下げる展開となりました。

お互い野菜好きという共通点と、遥さんが高橋さんのおばあさんと仲良くなったことで二人は親しくなっていくわけですが、個人的には最初はまだ高橋さんにその気があるのか確信が持てませんでした。

あくまで友人として見ていて、遥さんを自宅に招くのは祖母のためということも有り得ないとは限らないですし。

だとしたら酷い鈍感さだけど

でもだんだんと、どう考えても誤解されるような状況をそのままにしている様子から、高橋さんにも交際が頭にあるのだと分かりました。

かといってそれを明確にするわけでもないことから、心が決まらないのだとも理解できました。

第3話の感想でも書きましたが、アロマンティック・アセクシュアルの人間でも、そう簡単に自身の性質を決定付けられるわけではありません。

恋愛感情を持ったことがなくても、この先誰かを好きになれる気配が全くしなくても、それでも一生涯恋愛や結婚をしない人生を自分は送るのだと確信するには時間やプロセスが必要です。

人生の一大事

若い頃に付き合ったうちに入らないような交際の経験があるのは、アロマンティック・アセクシュアルあるあるだと勝手に思っています。

この時の高橋さんもそういう時期なんだろうか、でもドラマも終盤にきてさすがにそれはないだろう、咲子の過去で既にやっているし、といろいろ考えながら見ていたら、とうとう決定的な場面がきてしまいます。

遥は高橋の祖母から譲ってもらった指輪を、左手の薬指に嵌めてほしいとお願いします。

高橋は指輪を手に取りますが、顔は強張り指輪を持つ手は震え、遥の差し出した左手に近付けることができません。

そして「自分で付けてもらうわけには……、ごめんなさい…」と絞り出すように言います。

遥さんはまさかこういう終わり方を迎えるとは想像もしてなかったでしょうね。大失恋と称したのも分かります。

そりゃ「えっ…」てなるわ

高橋さんは自分で付けてと言いますが、指輪ひとつ嵌められないのなら普通の結婚生活はとうてい無理です。

そしてそんな無理なことを高橋さんが考えていた理由は、咲子が間を取り持ち、遥さんがおばあさんにお線香をあげに来た時に発した言葉で判明します。

おばあさんのために子供がほしかったんでしょ、と。

前回、咲子の妹の幼い娘や生まれたばかりの赤ちゃんを見て何か感じている様子ではありました。

でも実際高橋さんが自分の子を欲しがっているようにはいまいち思えませんでしたが、ようやく合点がいきました。おばあさんのためだったんですね。

母親から捨てられたと言う高橋さんは、育ててくれたおばあさんを一番大切に思っていて、おばあさんを安心させたいし、おばあさんの望みを叶えてあげたい。

だからおばあさんとも仲良くしている女性と結婚して、子を成して、ひ孫を抱かせてあげたかったんですね。

完璧な幸せ

自分の性質を曲げてでも、愛する祖母にその幸せをあげたかった。でも性的指向というのは永続的で変えられないし、その上高橋さんは他者と接触できないという性質も持ち合わせています。

仮に子供ができたとして、自分の子は触れるのか、乳児の時なら大丈夫なのか、だとしたら何歳から触れなくなるのか、そういう不安も当然あったと思います。

おばあさんはおばあさんで、母親に捨てられ祖母である自分に育てられた孫が、それを理由に女性を苦手としているんじゃないか、家庭を作ることを避けているんじゃないかと考えていたかもしれません。

それを想像すると、とてもじゃないけれど自分は恋愛感情を持たない人間ですなんて言えるわけがありません。

育った環境でそうなったわけではなく、生まれ持った性質だと説明しても理解してくれるか分からないし、どの道悲しませてしまうと思っても仕方ないと思います。

知り合ったばかりの遥さんが家に来た時、高橋さんはあんなに楽しそうな祖母は久しぶりだと言っていました。

見間違いようのない完璧な幸せをあげる最高の機会だと思ってしまったんでしょう。

どうしたって無理だけど

祖母にお線香をあげた遥は、農家デビューにも繋がる、地方で野菜を育てる仕事を高橋に紹介します。おばあさんが亡くなった今、もっと自由に生きてほしいと伝えます。

祖母の家を守ることを第一に考えている高橋は、地方での仕事など当然断ります。

咲子は絶対に高橋の望む仕事だと思い、ふたりきりになった後もう一度話をしますが、家族(仮)を終わらせたくないのならこの話は終わりだと取り付く島もありません。

ずっと態度が硬化してる

本当にこの話を断ってしまうのか、祖母の願いを叶えられなかった負い目がある高橋さんの家へのこだわり、咲子が高橋さんの幸せを願う気持ち、咲子の母親とのわだかまり、そして本題の家族(仮)はどうなるのか、いよいよ次週が最終回です。

どういう結末を迎えるのかとても楽しみです!

せっかく家族(仮)になったのだから、家族ならではの選択だといいなぁと思っています。

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